今回は、巷にあふれる「分かりやすい」系のテキストの落とし穴について解説していきます。
- 受験生
- 資格取得を目指す学生・社会人
「どうせ勉強するなら、”分かりやすい”テキストを使うのが良いよね」
多くの人はこう思うでしょう。
しかし、この「分かりやすさ」の罠にハマってしまうと、せっかくの勉強がムダになってしまう危険性があります。
そうならないためにも、「分かりやすさ」には「”悪い”分かりやすさ」と「”良い”分かりやすさ」がある、という事を知っておく必要があります。
そこで今回は、
- 「”悪い”分かりやすさ」と「”良い”分かりやすさ」って?
- どんなテキストを選べばいいの?
- 本当に良いテキストの選び方
について取り上げて行きます。
最初に:「”悪い”分かりやすさ」と「”良い”分かりやすさ」の違い
「”悪い”分かりやすさ」の特徴
「”悪い”分かりやすさ」の特徴があるテキストには、具体的に以下のような要素があります。
- 必要以上に比喩表現がある
- イラストや図、色が必要以上に使用されている
- あんまり考えなくても分かった気になってしまう
デザインに凝っていたり、著者が比喩表現を用いてカンタンに理解できるよう噛み砕いてくれていたりする、いわば「過保護」なテキストです。
これがなぜ「悪い」のかについては、後ほど解説します。
「”良い”分かりやすさ」の特徴
続いて「”良い”分かりやすさ」の特徴があるテキストには、具体的に以下のような要素があります。
- 客観的な情報が正しく整理されている
- 個々の気づきや理解をアシストするような内容
- 情報をかみ砕く余地が与えられている
ここでは、情報が適切に整理されており、体系立てて学ぶ上での順序が明確なテキストを「”良い”」テキストとします。
「分かりやすい」テキストが、実は危険な理由
いよいよ本題です。
「分かりやすい」テキストが危険な理由は、3つあります。
- 「分かりやすいテキスト=軽いダンベル」と同じだから
- 自分でイメージしなくても、分かった気になってしまうから
- 筆者の”たとえ話”がしっくり来ず、自分にフィットしないから
以下でそれぞれ詳しく見ていきましょう。
1.「分かりやすいテキスト=軽いダンベル」と同じだから
「分かりやすいテキスト」は、最初から「分かりやすそうな」情報が載っているため、たとえ自分が深く理解をしていなくても、表面上の理解だけで分かったつもりになってしまう、という事があります。
筋トレで例えるなら、めちゃくちゃ軽いダンベルを使っているようなものです。これでは負荷が足りず、筋力は付きませんよね。
要は「分かりやすい」テキストはスラスラ読めてしまうため、自分が分からない部分さえ分からず、何となく流し読みになってしまいやすい可能性があるのです。
2.その場しのぎの暗記方法がクセになってしまうかもしれないから
著者が至れり尽くせりで情報をかみ砕き、消化しやすいようにしてくれている「分かりやすそうなテキスト」は、言い換えると「自分で理解していなくても、丸暗記で対処できてしまう」という事になります。
つまり、そこまで脳みそを使わなくても済んでしまうという事です。これは勉強の本質にも繋がることかもしれませんが、大前提として脳みそ使わないと勉強になりませんよね。
ただ、例えば、短期間にテストの点数のみを上げるのが目的なのであれば、こういったテキストを利用して丸暗記も良いかもしれません。
(実際、筆者が新社会人の半年間で5つの資格を取得した時も、丸暗記やテクニック任せでした)
しかし、本当に自分の知識として定着させたい場合、丸暗記がクセになってしまうと脳みそを使う事が出来なくなる可能性があるため、注意が必要です。
3.筆者の”たとえ話”がしっくり来ず、自分にフィットしないから
分かりやすい系のテキストに多いのが、「よく分からない例え」です。
- 例えるなら~~です
- ちょうど〇〇のようなものです
- ××に似ていると思いませんか?
などと、著者の感性を我々読者に押し付けてくるタイプのヤツです。
もちろん、著者なりに分かりやすくなるように気を使ってくれている事は分かるのですが、個人的にはこれが一番苦手です。(まぁ説明上、本当に必要な場合の例示はいいのですが、事あるごとに例示をしてくるのはキツイです)
「例えるなら~~」「ちょうど〇〇のようなもの」「××に似ている」等は、完全に筆者の感性であり、読者である皆さんの感性とは違うはずです。
そればかりか、皆さんの固有の感性における「これって××みたい」「これは〇〇に似てるな」という、自分なりに理解して落とし込む機会を奪っているとさえ、筆者は思います。
これは持論ですが、そもそも「理解すること」は、”より高次元にあるものを、自分のレベルに落として持ってくる作業を自力で行う”ことだと思っています。
ですので、いくら赤の他人である著者が情報を分かりやすく調理してくれても、それは必ずしも現在の自分のレベルにフィットしません。フィットしないんだけども、何となく分かった気になってしまうから、特に気にせずスルーしてしまう。
「分かりやすい」系のテキストの問題点はまさに上記だと思います。
一般的には「人間は、自分の心が動いたときに何かを記憶できる。」と言われています。
人の心を動かす
— 下村尚之 | Fitbank CEO (@naoyuki_sh) June 21, 2020
この“深度”と“振り幅”が感動を生み出す。3日前食べた夕食は思い出せないが、学生時代、初恋の相手と初めてデートに行った時の食事は覚えている。会話も覚えているかもしれない。それは心が動いたからで脳ではなく心で記憶してるから
と紳介さんが言っていた。いい言葉だ
つまり、他者から「〇〇みたいなものです」と教えられるより、自分で「これって〇〇みたいだよね」と気づいた方が、記憶に残るし楽しいし、本来の正しい勉強法とも言えるのです。
注意:イラストや図がダメという事ではありません
ここまで「あまりに分かりやすいテキストは勉強にならない」とお伝えしましたが、「派手なイラストや図などが不要」という事ではありません。
当然ながら、目で見て覚えないといけない事もたくさんあります。
例えば理科の地学における地層とか、生物のDNA構造とかは図やイラストで見なければ理解できませんし、イメージも湧きませんよね。
あくまで、分かりやすさを求めるあまり「自分で考える」という勉強の本質を見失っては本末転倒になる、という事をお伝えしています。
とはいえ:「分かりやすい」系のテキストにもメリットはある
ここまで「分かりやすい」系のテキストをディスってきましたが、もちろん下記のようなメリットもあります。↓
- 内容を短時間でざっと一通り読むには向いている
- 勉強の心理的な負担が減る
人によっては「分かりやすい」系のテキストでないとやる気が出ないという人もいるかと思います。
そういう人はわざわざ難解なテキストを選んでも勉強自体手が非常にストレスとなってしまうため長続きせず、何もできず終わってしまいます。ですので、ストレスを感じたり、何もせず終わってしまうくらいなら「分かりやすい」系のテキストを使った方が良い、という判断になるかと思います。
このように、場面やご自身の性格を考慮した上であれば「分かりやすい」系のテキストを選ぶことも充分有効だと言えます。
まとめ
という事で今回は、巷にあふれる「分かりやすい」系のテキストの落とし穴についてお伝えしてきました。
- 「過保護な」テキストは、自分で考えるクセが付かず結果的に学習効果が上がらない危険性がある
- 「分かりやすい」系のテキストでは負荷が掛からない
- テキスト内の過度な「たとえ話」は、自分なりに理解する機会を奪われている可能性がある
ここまで偉そうに語ってきた筆者も、高校生の時は特に
いとう
と思っていました。
当時はセンター試験(共通テスト)まで余裕がなく、焦っていたからです。
確かに、自分で1から考えて理解をするというのは悠長に感じますし、心理的な負担も大きいと思います。しかし負担が大きい分、実力は確実に付いていきます。つまり遠回りなようで、実は時間短縮になると言えるのです。
「分かりやすい」系のテキストを選びたくなるのは非常に分かりますが、筋トレで例えるなら筋力を付けたいのに軽いダンベルを選んでいるのと同じですので、注意が必要です。
という事で今回の内容は以上になります。参考書選びの参考(激ウマギャグ)になったら幸いです。ありがとうございました。
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